もう一度振り返る、”バックアップ”の必要性
「バックアップとは、機器の故障や災害に備えて、物理的または仮想的なファイルやデータベースを別の場所にコピーすることを指します。災害復旧計画(DR:Disaster Recovery)において、バックアップは重要な役割を担います。」これがバックアップの定義ですが、その重要性は誰もが理解できるはずです。しかし、バックアップ作業は簡単なものではありません。特にコンピューターのオペレーティングシステムのバックアップは困難です。本記事では、定期的なバックアップの意義とその具体的な方法について解説します。

ファイルのバックアップが必要な理由
データのバックアップは、防御策やエンドポイントセキュリティと並んでセキュリティにおいて極めて重要です。個人や企業がデータ保護ソリューションを採用し、災害やトラブルに備える必要があります。データが失われ、それを取り戻す手段がない場合、精神的にも大きな打撃を受けるでしょう。写真やビデオといった大切な思い出や、購入証明書、手続き書類などのデータは特に重要です。企業においては、バックアップがなければ、財務データや営業情報といった機密データの喪失が重大な経済的損害や風評被害につながるリスクがあります。
データ損失によるリスク
ハードディスクドライブ(HDD)は、一定期間使用すると故障するのが一般的であり、誰もが避けたい状況です。ソリッドステートドライブ(SSD)は機械的な読み書きがないためHDDほど頻繁には壊れませんが、それでも故障のリスクはあります。例えば、お気に入りの写真を保存しているHDDが壊れると、異常音やクリック音が聞こえ始め、最終的にデータが見つからなくなる恐れがあります。一方、企業では攻撃者がデータへのアクセスを妨害し、不正に暗号化したり消去したりすることがあります。このような問題は、たとえ人為的なミスや機械的なエラーが原因でなくても、業務を中断させ、信用や評判に大きなダメージを与える可能性があります。
復旧のテクノロジー
故障したドライブや削除されたファイルを復旧する方法は存在しますが、必ずしも成功するわけではありません。これに備え、テクノロジーに詳しい人々は、CDやDVD、外付けドライブ、補助ドライブ、または少々手間やコストがかかるホームサーバーなどにデータをバックアップしてきました。現在では、これらの方法はクラウドバックアップに取って代わられつつあります。このクラウドサービスはコンピューター、スマートフォン(スマホ)、タブレットで利用でき、データの保存を簡便にするものです。ただし、クラウドサーバーの維持にはコストがかかるため、利用可能な容量や使い勝手に違いが生じる場合があります。個人や企業が選べるバックアップ手段について詳しく解説します。
物理的なバックアップ
外付けまたは補助的なドライブは、大容量のストレージが必要な際に最も簡単に追加できる選択肢です。特定のフォルダーを選んで別のドライブへコピーするだけで利用できます。MacOSユーザーであれば、Time Machine機能を使って別のストレージにデータをバックアップ可能です。一方、Windowsユーザーは、「バックアップと復元」機能を使ってシステム全体を別ドライブへイメージ化することができます。また、「ファイル履歴」を利用すれば、差分バックアップを自動的に取得可能です。Androidデバイスでは、Windows PCに接続して保存したいフォルダーをコピーするのが簡便な方法ですが、メーカーによってはローカルバックアップ用ソフトウェアが提供されている場合もあります。iOSデバイスについては、iTunesを使ってコンピューターに暗号化されたバックアップを保存したり、Wi-Fiで同期することも可能です。なお、「バックアップと復元」機能ではWindows 7を指定できますが、サポートが終了している点に留意してください。
クラウドバックアップ
クラウドバックアップを利用すれば、追加のドライブを購入したり、スマホのファイルを保存するためにコンピューターの容量を確保する必要がありません。クラウドストレージは手動または自動でデータを保存でき、必要なときには復元することも可能です。ただし、クラウドインフラの運用にはコストがかかる点に注意が必要です。一方で、インターネット接続があればどこからでも保存データにアクセスでき、物理的な接続が不要な点や、新しいスマホへの簡単な復元が可能な点は大きな利点です。
Windowsでは複数のクラウドサービスを選択できますが、標準搭載されているOneDriveは簡単に利用できます。バックアップしたいフォルダーを指定するか、保存したいファイルやフォルダーをOneDriveに追加するだけでOKです。無料で利用できる容量は5GBで、それ以上は有料です。macOSやiOSユーザーにはiCloudが便利で、デスクトップやライブラリを定期的に保存したり、iCloudドライブにファイルをバックアップすることができます。こちらも無料で5GBまで利用でき、追加容量は有料となります。Appleデバイスとのスムーズな連携や暗号化が強みです。AndroidではGoogleアカウントを使ったスマホバックアップが可能で、無料で15GBまで利用でき、追加ストレージは有料です。容量不足や品質の違いに注意が必要です。また、OneDriveやDropbox、Proton Driveといった他のクラウドサービスも利用できます。技術に詳しいユーザーなら、自宅にNASを設置してネットワークを通じてバックアップをとることもありますが、専門知識や手間が必要なため一般ユーザーにはあまり適していません。
デジタルライフを守るには
物理的なストレージやクラウドバックアップを利用する際に、専門知識は求められません。必要なのは、安全にデータを保存できる方法を調べるためのちょっとした探究心だけです。データを失うリスクを避けるため、バックアップを取り、その状態を定期的にチェックする習慣をつけてください。後で後悔しないように、安全なバックアップ方法を実践することをお勧めします。


