<リーダーシップの本質>―肩書きではなく「影響力」が組織を動かす―

会社という組織の中では、

社長や部長といった肩書きを持った人だけが

リーダーシップを発揮するのではありません。

一人ひとりが、それぞれの立場で

自分の仕事に責任を持ち、

その仕事をより良くしようと努力する。

その姿勢そのものが周囲に影響を与え、

結果として組織全体を動かしていく。

私はそう考えています。

リーダーシップは「命令」では生まれない

上に立つ人が命令を出し、下の人がそれに従うというだけの関係では、人は本当の意味で成長できません。人は、自分で考え、自分で納得し、

自分で行動するときに、はじめて本当の力を発揮します。

そのためには、上に立つ人も、下にいる人も、互いに影響を与え合う関係であることが重要だと思います。

井深大が語った「リーダーシップの原点」

そこで今回は、ソニーの創業者である井深大のリーダーシップ論について書かれた記事を共有し、

リーダーシップの本質について考えてみたいと思います。

リーダーシップの勉強を始めたきっかけ

リーダーシップの勉強を始めようと

私が思ったのは二十年以上前のことです。

都庁で管理職になった頃、

現役を退いたソニーの井深大さんの

講演を聴きに行きました。

「便所の落書き」が教えてくれたもの

ソニーの社長時代、

最新鋭の設備を備えた厚木工場が完成し、世界中から多くの見学者が訪れるようになりました。ところが、当時の工場で一番の問題になっていたのが、便所の落書きだったそうです。会社の恥になると考えた井深さんは、工場長に対して「何とかして落書きをやめさせるように」と指示を出しました。工場長も徹底して通達を出しましたが、それでも落書きは一向になくなりません。そのうち、「落書きをするな」という内容の落書きまで現れ、井深さん自身も「もう仕方がないのかもしれない」と半ば諦めていたそうです。ところが、ある日、工場長から一本の電話が入ります。「社長、落書きがなくなりました」驚いて理由を尋ねると、工場長はこう答えました。「実は、パートで来てもらっている便所掃除のおばさんが、清掃用の板に『きれいにしてください。ここは私の神聖な職場です』と書いて、便所に貼ったんです。そうしたら、ピタッと落書きが止まりました」この話を聞いて、井深さんも工場長も呆然としたと言います。井深さんはそこで、リーダーシップについての自分たちの考えが間違っていたことに気づいたそうです。それまでリーダーシップとは、上から下へ指示を出し、統率する力だと考えていました。しかし、それは違った。以来、井深さんはリーダーシップを「影響力」と表現するようになったと語られています。

井深大が気づいたリーダーシップの正体

井深さんはこの出来事を通じて、リーダーシップを「上から下への指導力」ではなく「影響力」だと捉え直しました。

リーダーシップとは「上下左右への影響力」

リーダーシップとは、常に自分を中心として、上司、部下、同僚、関係先へと影響を及ぼすものです。

上司を動かせない人に部下を動かすことはできません。人を通して仕事を動かせる人こそが、真の意味でのリーダーなのだと思います。

WBC栗山ジャパンに見る「全員がキャプテン」

2023年のWBCで優勝した栗山ジャパンは、あえてキャプテンを置きませんでした。「全員がキャプテン」という考え方のもと、一人ひとりが自分自身を“代表そのもの”として捉え、主体的に行動することが求められました。

会社組織に置き換えると何が起きるのか

これは会社組織にもそのまま当てはまります。誰かの指示を待つ組織ではなく、一人ひとりが「自分がこの組織をつくっている」という自覚を持つ。その積み重ねが、組織を強くし、人と人の成長を生み出していくのだと思います。

まとめ

リーダーシップとは、肩書きや役職によって与えられるものではありません。一人ひとりが自分の立場で考え、行動し、その姿勢が周囲に影響を与える。その積み重ねこそが、組織を動かす本当の力になります。全員が当事者意識を持ったとき、組織は特定の誰かに依存しない、しなやかで強い集団へと成長していくのではないでしょうか。